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3/17(日) お蔵フェスタにていよいよ木桶・桶太鼓が完成します!

昨年の2月に寺田本家、GOCOO、そして木桶職人に見守られながら空師・WO-unによって伐採され、4月に行われた「木遣り祭り」にて、GOCOOの太皷の音、そして寺田本家蔵人の木遣り歌が木霊する中、木桶となり桶太鼓となるため日向の森から送り出された樹齢80年ほどのサンブ杉。6月に製材され、ひと夏の乾燥を経たのち小豆島の木桶職人復活プロジェクトの手に渡り、余った材は愛知の三浦太皷さんの元へ。それぞれの想いと仕事が刻まれて丸太は少しづつ形を変えていきました。現在加工の工程がほぼ終了しいよいよ3月17日、5年ぶりのお蔵フェスタにて組み上げられ、完成を迎えます。

でもこの実りは終わりではなくあくまでも一つの節目。
結ばれた実は、その中に常に新たな始まりを孕みます。

木桶はこれから菌を宿し酒を醸し、太皷は命を揺さぶる音を響かせて物語の続きを紡いでいく。
私たちもこれから森で、この巡りの”その先”を育てていこうと思います。

これは製材が行われた時の事…
今回県内の製材屋さんに製材を依頼したのですが、木桶が使われなくなって半世紀以上が経った今、通常の建材とは求められるものが全く違う桶用材を挽ける製材屋さんはほぼ皆無。そんな中、福島で活動されている木桶職人さんが普段依頼されている地元の製材屋さんをわざわざ千葉まで連れて来て下さり、とてもありがたいことに一緒に作業して頂けることに。

木桶は古くなるにつれ酒から醤油、味噌と段階的により漏れにくいものの製造に使われるようになりますが、最初のお酒の仕込み用の桶に求められる板材の質や条件はかなり厳密で一玉から最大でも四枚しかとれません。腐りや節が出てきたり、木取りの読みを誤ると歩留まりは更に低下していく。

この地域のサンブ杉の8割が写真の様な溝状の腐りが入る「非赤枯れ性溝腐れ病」に罹患している。この腐りや歪み、そして節を上手く避けながら製材を進めて行く

経験に基づいた確かな技術と”感”の精度を求められる作業に千葉と福島の製材屋が額を突き合わせ、私たちにはわからない言語で通じ合い、私たちには見えない樹皮や木目の微妙な歪みや癖を読み解きながらの製材作業は進められていく… 更にそこには伐採の時と同様、寺田本家当主の優さんと蔵人、木桶職人、そして私たちC&A代表の空師WO-unも見守り、木を中心に据えながら領域をまたいでいくことの面白味と可能性に満ちたとても貴重な現場に立ち会わせて頂きました。

今回、元(下)から約8mほどを製材にかけたのですがやはり一番心配していたのは節(枝の痕)。節が出てきてしまうと漏れの原因となるのでその箇所は使えない。それを決めるのはこの木が植えられてから最初の数十年間、枝打ちや間伐などの手入れがされていたかどうか。

「もし節が多く出たら今回伐り出したものでは足りないかもしれない…」そんな私たちの不安とは裏腹に、製材して出て来た面は驚くほどに節が少ない! 半世紀以上前、この木々がまだ若かったころ枝打ちをしていた先人たちの姿が頭に浮かび、感謝の想いがこみ上げてくる・・・

寺田本家と山武の文化的交流があった明治から、令和に再び両者が出会い木桶を作るまでのこの100年。そんな過去の掘り起こしと”今”との撚り直しがこうして木桶と言う形で実を結ぶ。ここで痛感するのは100年前、まだそこにはいない誰かを見据え木を植え、手入れをした人たちのお陰で今があるという事実。であるとしたら私たちも100年後の誰かを想い、森の更新を通してこの巡りの”その先”を育てたい。

今回伐採された木々があった場所は今空が開け、林床に日が入るようになりました。そこにまた新たな苗を植え森を更新していく。これがかつて山武林業が、今でも全国的にその名を知られる良質なサンブ杉を生み出した「択伐」*¹、「複層林」*²という手法でした。その手法を今一度再興し、必要に応じて改善も加えながらこの森の更新を図っていこうと思っていますがそのためにまず、今年の春に【挿し穂を使い、プランターで苗づくり】、来年は【さらに苗を育てるため、畑へ移植】、そして再来年に【森へ定植】。それからようやく森での手入れが始まります。

その先は…と考えると気が遠くなりますが、自分たちが伐って使う事はない木を植える、という時間と価値観の尺度が”私”という枠を大きく超えていくこの巡りに参加できることに不思議な喜びと面白味を感じています。


普段から森に足を運んでくださる方、想いを寄せて下さっている方々にも是非ご一緒頂きたいので、また改めて苗づくりや植樹の動きについてはお知らせさせて頂こうと思いますが、まずはその前に是非お蔵フェスタに!!当日、WO-unも特設ステージで行われる木桶トークにゲストとして参加します。

木桶と桶太鼓の完成と、新たな門出を一緒に祝いましょう!

ki

*¹「択伐」- 用材に適した木を適量、選択伐採し空いたところに新たな苗を植え更新していく手法。

*²「複層林」- 複数の異なる樹齢の樹木が混在する森林で、段違いに2つ以上の林冠が形成される。山武林業ではこれを「択伐」などの手法と併せ人工的に作り上げていた。


【開催日時・場所】

日時:3月17日(日)9:00~15:30
場所:寺田本家敷地内および周辺街道

https://www.teradahonke.co.jp/